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2024/11/22 (Fri)


父親はベッドに少年を横たわらせた。
脈拍は微弱になっていきつつある。
呼吸も浅く早く必死にしているようだった。

「...っ...間に合うかわからんな...」

ガチャガチャと液体エルジュを注射器で吸い出す。
ほんの少量の液体エルジュ。
またの名を生命エルジュというものだ。
この液体が、人間の魂というのだからどこか不気味である。


今は、少年を助けることだけを考えていた父親は少年の腕を掴み、血管に注入した。

すると、数分しても脈が落ちる事も呼吸も止まらずに安定を見せた。
少年の顔は未だ白めではあるが、命に別状はなさそうである。
父親は少し安堵の表情をした。
ベッドに横たわり、寝息を立てていた少年。

ところが。

「...っぐ...ぁ...」

口を開け、小さくうめき声を上げる。
危惧していたことが起きているようだ。
身体自体が液体エルジュを異物と認識し、
拒絶反応を示しているのだ。

「...っぐ...ぁあ...痛...い...ぅあぁぁっ...!」

少年は声をあげる。どうやら、拒絶反応は痛みを生じているらしい。

耐えられず、ベッドの上でのたうち回る。

痛みの支配は頭の方へもきた。全身が痛いのか、頭だけが痛いのかももうわからないようで所々を押さえている。

声を荒げて痛みを消化するしかなかったのだろう。
悲痛な声とベッドのシーツを握り締め、抗うしかなかった。例えるならば、これから生きる時間分の激痛となんの感情なのかわからない恐怖と戦っているような。途方もない疲労。

それから、3日。
少年は、痛みから開放されたのか眠り続けていた。
父親が定期的に部屋を見にやってくる。
すると、今日は少年は目を開けていた。
息子は生きていた。
父親は表情にこそ出しはしなかったが、
心の中で喜びを覚えていた。

少年が扉の前の父親に気づく。
扉は小さくガラス窓がついていて、そこに父親の顔が見えたのだ。

少年がもそもそと起き上がり、よろよろと細くなった足を引きずるように扉に近づいてきた。
父親は、何事もないみたいだな...と安心した時。

「...どうして助けたのお父さん......」

少年は喋っていた。
それは、とても普通に。
この間までの途切れ途切れの言葉ではなかった。
はっきりと、少年の心からの言葉だとわかった。


「苦しいよ、痛いよ、こんな事感じなかったのに...どうして僕をっ...助けたの......っ......」


手足は震え、痛みに耐えようと表情を歪める。
少年の体には変化が起こりすぎていた。
感情も五感も以前とは違う。
人間らしく心を得たのだ。

「まだ完璧に融合できてはいないのだな...
熱を持ち、痛みを生じているのはまだ液体エルジュを異物として抵抗力が働いているのだろう」

父親は喜ぶような事もしなかった。
しかし、内心は違っていた。

息子は死ななかった。
それだけで安心だった。
自分のしている研究を息子にしてしまった事。
しかし、成功例がないままに行ってしまった事は息子をモルモットにしてしまったのではないかと自責の念に囚われそうだ。
それでも、生きて欲しかった。
それでも良かったと思っている。


そして少年は一週間ほど、この部屋に幽閉される。
痛みや不安定な精神状態が続き暴れる事が多かったのだ。
母親も、会わせてはもらえなかった。
父親はあんな状態の息子を見たら、取り乱してしまうだろうと言った。

「こんな...場所っ...!抜け出して...やる...」

少年は、強く扉を叩き続ける。
手は傷だらけになり、内出血をし始める程だ。


部屋は何も無いまるで独房のような場所にいた。
部屋の中は白い壁でおおわれていて、
見たこともない場所で不安は更に増すばかり。
壁に鉄格子の窓と閉ざされた鋼鉄の扉だけ。
用意されているのは、寝れるように備え付けのベッド。トイレと水道。
ご飯は一日三食は必ずもらえる。

決して、少年を閉じ込めたいだけではない。
魂を凝縮した液体生命エルジュの結果だけは誰も知らなかった。
成功したことが奇跡であることだけで、この先何があるかわからないでいた。

少年は一人頭を抱えながら自問自答を続けては
ベッドに横たわっていた。
そして一人黙々と思考を巡らせるのだ。

「...ぼくは...どうしてこんなところにいるの...」

「ぼくは...僕は...なんで生きてるの...意識が無くなって.. 真っ暗になって...」

『...キミハトマッタハズナノニネ...』

少年は顔を上げ、周りを見渡す。
特に誰の姿もない。

空耳...?

この頃、誰かわからないつぶやき声が聞こえていた。
数日するとこの幻聴は無くなったが、明らかに自分の意思ではない声である。

その声を思い出すには相当後の事になるだろう。


体の痛みは消え、精神も安定してきた。
父親は2週間ぶりに少年を部屋から出すことを決めた。

「...出ていいの...?」
「...もう大丈夫だろう?」

父親はやはり表情を変えず、少年に言う。
だが、少年はそんな父を見て思っていた。



...なぜ僕を見て“悲しそうな顔“
をしているんだろう...

僕は死なずに生きることができているのに。
悲しませているのかな...?

そして母親の元に戻った少年。
その後の話はまた、近いうちにしよう。


そして、この親子の成功は。
世を脅かす事件への幕引きとなるのだった。

to be continued..
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2013/04/30 (Tue) 創作のお話
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